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間の間の話 vol.01「ゲスト:谷尻誠さん」その3

─── 物語を語る。

間宮
谷尻さんがやられてることは、
あったらいいって思うものを、
そこにある使われなくなったものを
うまく利用して作るっていうことですよね。

谷尻
なんかみんなが使えないと思えば思うほど、
ラッキーだなっていつも思ってて。
誰が植えても育ちそうな畑じゃなくて、
みんなが
「絶対ここじゃ育たないよ」って
言ってるところで
育てたほうが価値になるので、
「ダメなとこのほうがいい」
くらいに思ってますね。

間宮
このサカイノマの建物も
古くて潰す予定やったんです。
更地にしてたら、
新しいものができてたかもしれません。
でも、新しいものってキレイだけど、
みんなどこか似たものが多い。
もともと町にあるものを上手く活用すると、
ものは古いけど逆に新鮮だったりする。
「ONOMICHI U2」は
まさにそういうことですよね。

谷尻
キレイにしようと思えば
いくらでもできるんです。
けど、キレイにしすぎると
町の人がその場所の過去を
語れなくなっちゃうんですよ。
「ここには古い倉庫があって…」って言っても
なくなっちゃってると伝わらないですから。
だから僕らは、古い倉庫を残しながら
その周りに新しい建物を建てることにしました。
残すことで、町の人が過去から今までの物語を
語れるようにしたんです。

間宮
今、「語れるように」って言われてましたが、
たぶんこれからのデザインは、
「デザインをするより物語を作る」ことが
大事だと思います。
特に谷尻さんは物語作るのがうまいですよね。

谷尻
デザインだけで勝負しようとすると、
間宮さんみたいな諸先輩方に
上手い人がもうたくさん居るんですよ。
もう上手い下手だけだと勝てないなって
考えていくうちに
物語だとか、愛着だとか、
あるいは他の人が物語を語りたくなるだとか。
だんだんそういうことが必要だって
思うようになったんです。

間宮
たぶんその物語の作り方っていうのは、
勉強して学んだというより、
自分のやりたいことを通して
身についていったと思うんですが、
どうですか?そのへんは。

 

─── わがままじゃないと誠実じゃない。

谷尻
だんだん年齢を重ねるとともに、
「わがままに仕事しないと誠実じゃないんだな」って
思えるようになりました。

間宮
あぁ、そう?

谷尻
例えば、今まではお施主さんの要望を叶えることが、
大事だと思ってたんです。
でも、その人が考えが
そんなに良くなかったりする時に、
「こっちの方がいい」っていう、
こちらのわがままも含めて提案しないと、
どこかで「やりたくないのにやってる」
みたいな状況が生まれてしまう。
もっとこうすればいいのにって思いながら、
ギクシャクしたまま仕事をしてしまったり。

間宮
あぁ、そうやね。

谷尻
それを言って断られるんだったら、
まぁ断られてもいいっていうくらいに思って。

間宮
またうまいな、そのやり方が。

谷尻
あ、ほんとですか。笑。
僕がお客さんに毒まいて、
「こいつ生意気だな」って切る人は
もうしょうがないというか。
「この人、真剣にやってくれてるんだ」って
思ってくれる人とは、
むしろちゃんと共通認識を持てると思います。

間宮
なるほど。

谷尻
それまでは単独犯的にやってたんです。
設計者って口も上手いし、
変な言い方ですけど、
「こっちの方がいいよ」って
騙せちゃうところもあるんです。

間宮
はいはい。

谷尻
でも、それやると誰も幸せにならないので、
今はもうちょっと共犯関係になって、
「あなたのお陰でこれができました」って進める方が
プロジェクトを育てていけると感じてますね。

 

─── 小さなものから大きなものへ。

間宮
共犯関係っていうのは、
今の町づくりでも言えるかもしれませんね。
昔の町づくりは、
行政や企業が、土地を潰して
なんか建てて売るという感じでした。
最近は地域の人と一緒に
地道に一つずつ積み上げていってる
という印象です。
それが地方に根付いてきてるという意味で
いい時代になってきてますよね。

ただ、それを形にするのは簡単ではない。
だからデザイナーが先頭立って形にしていけると、
地域の人や行政とも一緒にやれるんじゃないかな。
そんな時代になったらいいと思いますね。

谷尻
「ONOMICHI U2」をやるとき、
『小さな公共性』という言葉をテーマにしてました。
今までは、行政が町の人の知らないところで
なんでも進めちゃうみたいな
「よく分からないぼんやりした大きいもの」を
「公共」って言ってた気がするんです。
でも、もうちょっと身近なところから
みんなが「いいよね、いいよね」って集まり始めて、
気がつくと大きな人数になってるみたいなものを
「公共」って呼んでいけるようにしたい。
「大きいものから小さいものへ」ではなくて、
「小さいものから大きいものへ」って
考えないといけない時代だと思います。

 

(次回につづく)


Author
古島 佑起

ことばとデザイン主宰。グラフィックデザイン、コピーライティングを軸に、行政、教育、芸術・文化、医療、飲食、農業など幅広い分野で、広告制作やイベント企画、商品開発などを行なう。近年は大阪・八尾のものづくりの魅力を発信するプロジェクトYAOLAで精力的に地域と関わる。

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